のど飴日記

プレイバック 最近のぼく / 僕でんち食べちゃったの巻 2013



それは先週の出来事だった。11月にしては冬のように寒く
冷たい雨の降る夜で、時計の針は10時を少し回っていた。
僕はさっき食べたものをもうひとつ食べようとお母さんに尋ねた。
「ねぇ、これもうひとつ食べていい?」
するとそれを聞いた彼女は僕の手のひらにあるものを見た。
「ちょ、あんた!これ電池じゃないとね?食べたと?」
僕の想像を超えた驚きと甲高い声が部屋中に響いた。
パソコンをしていたお父さんもハッと振り返り僕を見て言った。
「まじや!なんなん?なんば食べたち?ん?どれ?」
その声のトーンはお母さんの慌てぶりとは対照的だった。
どこかこの「電池食べちゃった」事件をブログのネタにしようと
薄ら笑いを浮かべているようにさえ思えた。完全に小悪魔な顔だった。
しかし、お母さんは違った。本気で心配してくれたんだ。
電話の受話器をとると急患センターに電話をかけ内容を話した。
担当者は「すぐに来て下さい!」と言ったらしい。
お父さんもお母さんもお食事の時にお酒を少し飲んでおり、
車を運転出来ないということでタクシーで行くことになった。
パソコンをしていたお父さんは「喉に指突っ込めば出るくさ!」と
僕の口に指をグイグイ入れて背中をバンバンと何度も叩いた。
出せるものなら出したかった。でも出ないものはしょうがない。
そんなことはいいから早く病院へ行って!とお母さんが言うと
お父さんは着替えを済ませ保険証を手に僕を抱えて外へ出た。

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僕が食べようとしたもうひとつの電池


外は風がびゅーびゅーと吹き横殴りの強い雨が降っていた。
お父さんは傘をさし僕をだっこしたまま通りまで走った。
手を挙げるとすぐにタクシーは捕まった。
僕らはサッと乗り込んだ。お父さんが行き先を告げると
タクシーの運転手さんが「どうかしたんすか?」と尋ねた。
するとお父さんは「こんチビが電池ば食べたとですよ!」と
前の車を追って下さい!的なテンションでこれまでの経緯を
ドラマのように語った。運転手さんはとてもいい方で
「そういうことなら急ぎましょう!」とガンガン飛ばしてくれて
アッという間にももちの急患センターに着いた。
お父さんは運転手さんにお礼を言い何度も頭を下げていた。
すぐに電池を本当に食べたのかを調べるためにレントゲンを撮った。
レントゲン写真の胃袋のあたりにきれーに電池が写っていた。
ひとまずお腹まで降りてきていたので緊急性はなくなったが
このまましばらく電池が動かないと粘膜に張り付いて
そのうち電池が溶け出すかもしれない。そうなると厄介ですね~。
ということで、処置の出来る夜間受付の可能な病院へ行って欲しい。
となり、紹介状を手にまたタクシーに乗り大学病院へ向かった。
僕が電池を食べてから約40分ほどが過ぎていた。

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紹介された大学病院の小児外科の夜間受付に行き
受付を済ませて待っていると夜勤の看護婦の方が数名いて
忙しくされていました。みんな若くてちょっと嬉しかった。
小児外科の先生も女性でした。診察では電池を取るか取らないか?
の一点に絞り込まれた。またレントゲン(透視)をしたけど
電池が全然動いてなくてさっきと同じところに留まっていた。
お父さんが「そのうちうんこで出っでしょ?」と尋ねると先生は
「十二脂腸までいけば大丈夫だと思うけど動かないと心配かなぁ」
と冷静な回答。それを聞いてお父さんはうつむき少し考えてから
「先生、この子を助けてくんしゃい!」と一転して厚情な父親に変貌。
さっき「そのうちうんこで出っでしょ?」とまるで他人事のように
言ってた人と同じ人間とは思えないくらいだった。
僕は手術台の上に仰向けに寝て痛み止めの点滴を打たれた。
先端に磁石の付いた細長い管を胃袋まで入れて電池を取り出します。
との説明にお父さんも「まじっすかぁ~」と思った筈。
しかし、これ以外だと胃カメラで取るしかないと言われそのまま進んだ。
だんだんと僕も緊張してきて手に汗握ってたんだけど、
先生の目が「わたし、しっぱいしないので!」の人に見えてきて
きっとうまくいく大丈夫って思えてきました。そして、
細長い管を入れていく途中で何度も嘔吐をしました。
食べたものをゲーゲー吐いたんです。もう死ぬかと思いました・・・。
もう限界、助けてェーと思って吐いた渾身の嘔吐の時でした。
出てきました電池が!それを見て先生は優しく微笑んでくれました。
処置も終わり、帰り際に若い看護婦のお姉さんたちから
「がんばりましたよぉ!ほんとおりこうさんでしたよぉ!」と
いっぱい褒めて貰いました。すると、ひねくれもんのお父さんは
「いやいや、おりこうさんは電池とか食べんでしょ。」って言ってました。
これには皆さん苦笑いでしたけど。もう電池は食べません・・・。

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僕のお腹から出てきた電池


[11/27 2013]





そんな僕も9歳になりました!
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父親談 : ほんと、あの時は「これは傑作が書ける!」
と思いましたね~。あ、違うかw
こうして笑ってられるのも、無事だったからですけど。
小さなお子さんがいらっしゃるお宅も多いかと思いますが
こういう時はあせらず落ち着いて行動しましょう。
気のせいか、息子を触るとビリビリっとくる時があります。
まさかこんやつはイナズマンになったっちゃなかろうか!
・・・、んなわけないか(笑)。


[02/06 2019]








by bloodandsystem | 2019-02-06 12:34 | | Trackback | Comments(0)